Lucky Reviews Afterstory

2007-02-01 ……あのときのことが、目に焼きついて離れない……

Posted by Lakililac at 2007/02/01 21:00:23 B

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森田兄弟の父、森田司は発明家であり森田技研の社長であった。彼の幼馴染である根岸は技研で働く同志であったが自身の病と母の介護、司への劣等感からフロイド社が森田技研を買収する手助けをした。それから十数年後…。

ハチミツとクローバーII Chapter 7のあらすじ

森田兄弟の父、森田司は発明家であり森田技研の社長であった。彼の幼馴染である根岸は技研で働く同志であったが自身の病と母の介護、司への劣等感からフロイド社が森田技研を買収する手助けをした。それから十数年後…。

輝いていた幼い日々

森田技研での何気ない日常。

あれ?なんでそんなにナチュラルに見知らぬオッサンが働いている工場?、会社?の日常が描かれているんだ?と思ったら、この人、声が森田さんと同じで、言動も瓜二つ。

リモコンがゴキブリのように集まってくる機械を作ったりしていて、楽しそうです。

でも、ハチクロの宣伝とかで聞く、「最後まで片思い」とか「最後まで…」という楽しい時間の終わりを主題にしているということを思い出し、「輝いた時間」がここにもあって、それが終わっていく様子を描いていくのかと一瞬で想像できました。

そういう穿った目で見てしまうとフラグが立ちすぎていて、痛々しい。


それはそうと、今回は今まで語られることがなかった美大の5人の中でも圧倒的な才能と予測不可能な行動で読者、視聴者、登場人物を驚かせ続ける森田忍の過去の話でした。

なんと、公式ファンブックにも森田忍、森田馨の出身地が明かされていないので、これで分かるかな…と思ったけど、やっぱり最後まで場所を特定するような地名、単語は出てきませんでしたね。

ここで脱線して少し補足をすると、公式ファンブックまたは作中の記述によれば、他の主要な登場人物の出身地は花本はぐみ…長野県安曇野(あずみの)、竹本祐太…群馬県安中(あんなか)、山田あゆみ…東京都杉並区浜田山、真山巧…石川県金沢市、という感じになっています。

忍の兄である馨の存在を除けば、森田と真山は作中で家族に関する記述がなかったが、一応真山の設定だけは存在していた。

今回ここまで詳細に幼い頃の話を描いたのだから、そろそろ森田忍の出身地が明らかにされてもいいのでは?と思ったりします。別に話には何ら影響しないのでこのまま出身地不明のままでもいいけど。


話を戻すと、今回はなぜ森田忍が8年も大学に居続けて、お金を稼ぐために徐々に下宿先を空けることが多くなっていたのかという、原作第1巻およびアニメ第1期の Chapter.1 からそもそも疑問に思うべき問題に焦点が当たった。

学生の身分でありながらお金を稼ぐなんて…とか、そういう考えを持つ人は現代では十分に駆逐されたでしょうけれど、学生の身分で映画のCG作成のため1年も日本を離れ、ギャラ4億(これ、単位は円なのかドルなのか?)も稼ぐという普通では不必要だと感じられる超人キャラ設定が必要だった理由が明かされました。

というか、これは連載時にも思ったのですが、昨年や一昨年は世間でもいろいろと株やTOBなどの話題が多く、作者がそれを上手く絡ませただけであり、 第1期のChapter.1や原作の時点では決まっていなかったのではないかとも思うのですが。

持つものと持たざるもの、司と根岸のおじさん

森田司は才能に溢れ、自由奔放な振る舞いをして騒ぎを大きくしたり、発明したり恵まれた人生を送ってきた。それでいて人望が厚く、皆から慕われていた。

どんなピンチでもチャンスにしか見えないようだった。恐怖を感じながらそれを押し殺しているのか、端から恐怖を感じてさえいないのか…。これだけ長くいるのに、分からない。と司の幼馴染の根岸でさえ幼い馨に語っていた。


そんな司には敵わないと感じていながら、根岸は森田技研で働き、司の傍にいたということは、根岸もやはり、司の魅力を十分分かっていたからだろう。

しかし、根岸には老いて痴呆気味の母がいて、その介護をしなければならないのに自分も命に関わる病に冒されているという過酷な事情があった。

自分が入院するか死ねば、母の世話はどうなるのかと言う不安と絶望を募らせ、とうとう外資からの甘い誘いに乗ってしまう。

それが、友を裏切り、自分もまた騙されることになることも知らずに。


才能を持つ者、持たない者という構図は明るい美大生活といった印象のあるハチクロの世界でもこれまでに描かれてきたテーマだった。

それは形を変えて、登場人物を変えて繰り返し描かれている。

第1期 Chapter.12 での森田に対する竹本の叫びは、竹本が欲しい恋愛も芸術の才能も何もかも手のひらに乗せていながら大事そうにしていないように見えたことに対する森田への感情を思わず外へ表現している。

また、原田に対する修司の思い、はぐに対する修司の思いもこの構図に当てはまるところがある。

前者は一緒にいながら、自分には見えない世界が見えていた原田への憧れであり、後者は自分を慕って美大に入ったはぐが賞のために絵を描こうとしている状況を、はぐを使って自分が果たせなかった夢をやり遂げようとしているんじゃないかという苦悩( Chapter.20 より)であった。

逆に、才能を持った者にしか分からない苦悩もはぐを通して描かれている。

このテーマは描く側が両者の立場を想像して描くしか方法がなく、素人でもリアリティを持たせて描くのが難しいと判るのだが、ハチミツとクローバーが美術大学の学生達を描いた作品である以上避けては通れないものであろう。

持つものと持たざるもの、忍と馨

突飛な行動を馨が命じて忍がこなす。お金儲けのためなら留年の一つや二つ、三つ四つをこなしてしまう強力な協力関係にあるこの兄弟、森田馨と忍もまたそれぞれ別の人間であり、才能の有無、広く言えば異なる個性を持つ。

父同様に才能に恵まれている弟の忍を羨ましく眺める馨。自分にしか出来ないコトがあると信じたかったという無念さ。


…とはいえ、馨も十分に凄い設定だと思うのですが?

竹本に47,200円を請求しようとしたり、細かいところで忍とノリが似てるしw

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